INTRODUCTION

神奈川県三浦。
海岸には一人の男が立っていた。
男の名は北方修二。
東京で歌人として活躍してたはずの彼だったが、
今はくたびれた格好でただ海の方を見つめていた。

「北方修二さん、ですよね?」

突然現れた陽気な男は探偵だと名乗った。
名刺には稲葉昌男と書かれている。 
立ち去ろうとする北方にかけられた言葉。

「聞かせちゃくれませんかね」

それは彼の、そしてこの海を共に眺めた幼馴染の物語。紅に染まるあの夢のようなあの時は、今も彼の心から消えることはない。

「一番悪いのは、あいつだ…」

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2020年4月6日から12日まで、阿佐ヶ谷アートスペースプロットにて上演予定だった
劇団ゴールデンタイム!「眩惑のマゼンタ」
コロナ感染拡大防止のため無期限延期となったこの作品、無観客上演を収録しDVD作品となった。



大正12年。新謡社の歌人である、北方 修二はとある事件から同郷の士である憲兵大尉、粕壁 正彦と帝都東京で思わぬ再会を果たす。
再会を喜ぶ二人であったが、歩んできた道、二人が置かれている立場、目指した理想の相違により、少しずつすれ違っていく。
歌人として、軍人として理想を追い求める二人。
彼らの手が朱く染まる時、東京を未曽有の震災が襲う。
二人の再会は、やがて訪れる悲劇へと繋がっていた……
『……一番悪い奴は誰だ?』